第28回日本がん免疫学会総会・第37回日本バイオセラピィ学会学術集会 合同開催

会長挨拶

第28回日本がん免疫学会総会会長挨拶

昭和大学 医学部内科学講座腫瘍内科部門
主任教授  角田 卓也

今回、伝統ある日本がん免疫学会学術集会の会長を務めさせていただきます昭和大学医学部内科学講座腫瘍内科部門主任教授の角田卓也です。1996年に発足した日本がん免疫学会の前身である基盤的癌免疫研究会の時代より、一貫してがん免疫療法の基礎的・臨床的研究開発に関わってきました。この学会に育てていただいたと考えており、開催させていただくことをとても光栄に感じます。

免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が臨床で使用され、がん薬物療法にパラダイムシフトが起きました。その臨床効果は従来の抗がん剤や分子標的薬では達成できなかった完治を思わせる長期生存患者を生み出しています。一方、免疫関連有害事象と呼ばれる極めてユニークな免疫反応である副作用を起こすことも分かってきました。これまで日本がん免疫学会が腫瘍免疫に関して基礎的に培ってきた科学的エビデンスや知見が実際のがん患者の治療に活かせる時代となりました。腫瘍免疫の知識を十分に理解した上でないとがん患者に適切な治療を届けることはできなくなってきました。そこで、今回は基礎・臨床の垣根を取り払い次世代のがん免疫療法を見据えて第37回バイオセラピィ学会と協同で開催することとなりました。第37回バイオセラピィ学会の会長は滋賀医科大学外科学講座(消化器・乳腺・小児・一般外科)教授、谷眞至先生です。この画期的な試みは、がん免疫学会理事長 鳥越俊彦先生(札幌医科大学医学部病理学第一講座教授)と日本バイオセラピィ学会理事長 河野浩二先生(福島県立医科大学消化管外科学講座教授)の力強いご尽力のたまものです。谷先生と相談のうえ、今回のコンセプトは「基礎と臨床の融合で進化するがん免疫療法の新時代」としました。基礎の持つ強み、臨床の持つ強みを融合し、そこから化学反応を起こせればと考えております。学会の運営も従来の常識にとらわれずユニークなものにできればと考えております。

また、副会長として昭和大学臨床薬理研究所臨床免疫腫瘍学講座 吉村清教授と昭和大学臨床薬理研究所臨床腫瘍診断学講座 和田聡教授にお願いしました。お二人とも腫瘍免疫研究の分野で大活躍をされており、本学会を有意義なものとできると確信しております。

会員のみならず広くがん免疫療法に携わる方々のご参加を期待しております。次世代のがん免疫療法に向けた新しい可能性を模索できれば会長として望外の喜びです。

第37回日本バイオセラピィ学会学術集会総会会長挨拶

滋賀医科大学 外科学講座(消化器・乳腺・小児・一般外科)
教授  谷 眞至

第37回日本バイオセラピィ学会学術集会総会会長を仰せつかりました滋賀医科大学外科学講座 谷 眞至です。このような歴史と伝統のある本学会を担当できますこと、名誉に感じております。教室を代表して役員ならびに会員の皆様に厚く御礼申し上げます。

日本バイオセラピィ学会は、がんなどの難治疾患に対する免疫療法を確立するという理念のもと、1987年JBRM (Japanese Society of Biological Response Modifiers) 研究会として設立されました。思い起こせば、私も第24回日本バイオセラピィ学会学術集会総会を主宰されました恩師の山上裕機先生のご指導の下、第2回の東京での総会でポスター発表したことを今でも覚えており、研究の楽しさや厳しさを教えていただきました。がんに対する免疫療法は厳しい冬の時代もありましたが、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の臨床応用により、免疫療法に最も期待する長期生存、すなわち治癒に至る症例を経験するようになってまいりました。今や多くの疾患に適応され、がん薬物治療の柱となってきています。しかし、その効果はまだまだ満足のいくものではなく、残念ながら自分たちの無力さに涙することもあるのが現状です。免疫療法の効果を高め、次世代免疫療法へ進むためには、抗がん薬のような発想ではなく、がん免疫を理解した上での理論に基づいた新規治療法の開発・実践が必要であり、がん免疫療法の次のステップへの進化のためには基礎と臨床のクロストークは必須であると私は信じています。今回、第28回日本がん免疫学会との合同開催のという新たなスタイルでの学術集会総会となりました。

私は卒業後から消化器癌の治療に携わってきましたが、最近のがん治療学の発展には眼を見張るものがあります。ICIの臨床応用など、がん治療を取り巻く環境は大きく変化し続けています。ひょっとしたら、がん免疫療法の進歩により外科医が失業するような時代がやってくるかもしれません。このような夢物語を語るために、合同大会のテーマは「基礎と臨床の融合で進化するがん免疫療法の新時代」とさせていただきました。この合同開催から基礎と臨床の新たな接点が生まれ、新時代免疫療法への礎となる会になれるよう、第28回日本がん免疫学会総会会長の角田卓也先生と力を合わせて有意義な会になるよう尽力いたしますので宜しくお願い申し上げます。